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◎産むという選択


 ここで産むという選択を取りあげて考える理由はいくつかあります。

 ひとつは、妊娠中絶の権利がおびやかされていて、それを守るために運動しなければならないアメリカの状況とくらべて、日本では妊娠中絶の問題が放り出されていて、中絶の選択を女性の権利として守らなければならないというよりむしろ、それ以外の方法が見つかりにくい現状をなんとかしなければいけないと思うからです。

 ちなみにアメリカではまったく状況が異なっていて、キリスト教原理主義者が妊娠中絶を非合法にしようとしていたり、中絶手術を行う病院が暴力で脅されたりしています。そのような環境下では、中絶の権利を守れ、というのが大きなテーマになってもおかしくありません。

 一方、日本では、そのような動きは大きなものではありません。中絶体験者や中絶手術に対する心ない態度や中傷が時にあるとはいえ、中絶手術をする権利は(法的にいびつな形であるとはいえ)守られていると言えます。

 しかし、中絶が可能である一方で、その存在は見えないよう、わからないようになっています。そして、それについてきちんと考える機会は、まだ十分にあるとは言えません。また、中絶を選択する人々の中にも、本当は産みたい人や、なぜ産めないのかについて納得できないでいる人がたくさん含まれているのが現状です。

 このページでは、中絶を選択する女性の権利を100%支持した上で、中絶しない選択についても模索できればと考えています。



「産みたい・産めてもおかしくないのに産めない」ケース


 掲示板に書き込みされる方の中には、カップルで十分話し合い、納得の上中絶を選択される(あるいは産むことを選択される)方もいますが、しばしば見られるのは、女性の意志と男性の意志が食い違ったり、当事者と周囲との意見が食い違うケースです。このような場合、十分な話し合いがないまま、納得がいかない状態で女性が中絶せざるを得なくなってしまい、大きなわだかまりが残されることも少なくないようです。

 そのような経験をされた方は、他の女性に対し、産みたいのならばとことん産みたいと声を上げて、男性や周囲に押し切られないで納得がいくまでがんばるべきだ、さもないと悔いが残る、とアドバイスされています。


 産めるはずだったのに産めなかった、というケースの背景にはいくつかのパターンが指摘できます。
・子供を持つことに対して男性が(あるいは女性も)安易に考えていた
(妊娠したら結婚すればいい、といったような言葉を十分な避妊をしない理由にしていたけれど、実際にはそんな状態ではなかった、など)
・パートナーとの間での意志の疎通の不備
(子供を持つことや結婚について、パートナーとの間できちんと話し合われておらず、意志の不一致がうやむやになっていたり隠蔽されていたなど)
・周囲の反対
(親の体面であるとか、家族に問題がある、あるいは家族がパートナーとの関係を認めないなど)
・経済的問題
(実際に産み育てるための経済力がなかった、など)

 これらの問題が背景にある場合でも、きちんとした話し合いによって、納得の上で中絶ないし産むことを選択することはありえますが、周囲やパートナーが相互の事情について納得のいく説明ができない/しない場合には、女性にとって不満の残る結果になることが多いようです。



どうすれば産めるのか


 周囲から反対されたり、自分たちの経済力が不十分な状況下でも、産めるような方法について、考えているページもあります。公的な制度の支援を受けることで、なんとかそれが可能にならないかが考えられています。(リンク

 もちろん、公的な支援を得たからと言って、それは決して楽ではないと思いますし、公的な支援を受けること自体が大変なことだとも思います。また、公的な支援しかあてにできない家庭が抱えうる問題を考えると、必ずしも誰にでもできることだとは言えないかも知れません。

 ここでは、具体的な方法についてはひとまずおき、どのようなケースがあり得るかについて検討したいと思います。



若年結婚・出産


 とりあえずカップルの双方が結婚して子供を持つことに同意して、出産できるケースです。必ずしも年齢が若い場合に限らず、カップルのどちらかあるいは両方が学生だったり、経済的に安定していない場合もこれに含まれると思います。

 掲示板に書き込まれた中にも、結果的に結婚・出産に至ったケースが見られました。そのケースでは、男性はまだ学生で、予定外の妊娠でしたが、男性が積極的に行動したこともあり、結婚して出産されたそうです。

 そのケースでも、最終的には親の支援は得られていたようです。得てして「若すぎる出産には親の支えが不可欠」と言われるように、このような場合には親の支援があるかどうかが重要なポイントであると言えそうです。

 仮に、親の支援を欠いたとしたら、どのようにしてそれが可能であるのかについては検討が必要になりそうです。上記のような公的な支援のほか、周囲の個人や団体による支援についても検討してみる価値があるかもしれません。(たとえば、宗教団体などにその可能性が見いだせないだろうか、と思います。)



シングルマザー


 シングルマザーといっても多様で、意図せずしてシングルマザーになってしまったり、シングルでも産むと決めたり、逆にシングルマザーとしての生き方を選び取ったり、様々な人がいると思います。

 非常に雑な分け方になるとは思いますが、シングルマザーになる選択が比較的あり得るのは、次のようなグループであるかと思います。
・若い(たとえば10代)女性が、両親の支援・保護のもとにシングルマザーになる
・ある程度の年齢で、「手に職のある」女性が、経済的に自立しつつシングルマザーになる

 逆に言えば、その中間の、親から自立したばかりの20代初めから半ばの女性や、出産によって退職を余儀なくされる地位にある女性にとって、シングルマザーという選択はかなりきびしいものなのではないかと思われます。

 また、若くても親の支援が受けられなければ、公的な支援やそれ以外の支援をあてにせざるを得ず、状況としてはむしろ不利になると言えるでしょう。

 もうひとつ、ここで提示できる疑問は、しばしば見聞きする「親の保護下にあるシングルマザー」像が、中産階級(この言葉もあやふやですが)には当てはまらないように思えるということです。仮に、比較的収入があり、高学歴な家庭がシングルマザーを支援できず、そうではない家庭のほうがむしろそれをできるのではないか、という推定がある程度妥当であるとしたならば、中産階級とはなんともやりきれない脆弱な存在なのではないか、と思われます。


 以上の記述はいささかあやふやで、十分な根拠に基づいていないので(すみません)、具体的な情報についてはこちらのリンクをご覧ください。



養子縁組


 日本ではあまりメジャーではありませんが、生まれた子供を養子に出すことは、海外ではあり得る選択です。国内でも、そのような活動を行っているグループはあります(リンク)。

 この方法がどのような価値を持っているかは一概には言えません。妊娠中絶という方法をとらなくてすむという一方で、果たして生まれた子供を手放すことが、女性にとってどのような体験であるか、それがベターなものであるかどうかは、慎重に検討する必要があると思います。また、養子に出された子供のその後についても、きちんと考えてみる必要があります。(海外には、養子に出された人々が互いの精神的な問題や実の親探しなどを助け合う自助グループもあります。)

 また、女性が、意図せず妊娠してしまい、やむなく子供を産み、そしてやむなくして子供を手放してしまうといった、受け身の、主体性を欠いた存在であっていいのかといった疑問、そして子供を養子に出すという行動は女性を主体性を欠いた存在のままにしておいたり、それを強化するのではないかという疑問もあります。

 しかし、ひとつの方法としては存在すること、そしてそれを望む人がいるのであれば、その活動には価値があるのではないかと思います。