|
|
|
◎未成年の中絶について
未成年の中絶においては、親・保護者の承認が必要であると定められていますが、親に言いたくないと考える人たちも少なくありません。また、現状では親の承諾書を自作したり、本当の年齢を告げないことで、親に言わないで中絶手術を受けることもできます。
このことに対して、強い非難を掲示板に書く人たちもいます。いわく、法律に反している。いわく、自分の責任がとれる年齢ではない。親に告げることが当然である、と。
しかし、私たちは必ずしもその意見には賛成しません。理由は以下の通りです。
1. 必ずしもすべての親が、責任ある行動をとれるわけではないこと。
中には、親に言うことで状況がより悪化するという人たちも確実にいます。子供を精神的に虐待する親、子供に向き合えない親、自我ばかりが強い親、そして子供の中絶という問題に対応する能力のない親もいます。そういう親に言わなければならないことでよりいっそう傷ついたり、言わなければならないという葛藤で安全な中絶の時期を逃してしまう危険を冒すぐらいであれば、言わないという選択肢もあり得るべきだと考えます。また、そういう人たちは少数かも知れませんが、必ずいます。少数であっても、親に告げることで問題が悪化する可能性がある人たちがいる以上、その危険を無視して、一律に親に言いなさいと言うべきではないと考えます。
2. 未成年に自己決定をまったく認めないことへの疑問。
19才が未成熟で、20才になれば成熟したと単純に決定するのは奇妙なことであるように思われます。たとえば、自分が19才の時と20才の時でどう違ったか、あるいは18の自分と22の自分でどう違ったか、振り返って考えてみることでわかると思うのですが、22の自分が18の自分とまったく異なる、成熟した存在であったと断言できる人がどれだけいるでしょうか。
それを考えれば、未成年者は成熟していないから自己決定する力がなく、親の許可をもらう義務があると考えるよりもよほど、親の保護を受ける権利があると考えたほうがよいのではないでしょうか。そして、親からどのような保護を受けられるかについては、個々の事情によって考える必要があると思います。
(ここでは法律をどう解釈する(べき)かといった議論はしませんが、どう解釈される(べきである)にしろ、現実には上記のような方法によって適用がスルーされていることを考えると、法律を厳格に適用しなければならないと言うのは、法律を変えなければならないと言うのと同じくらい机上の空論であるように思います。)
3. Webの掲示板が持つ力の限界。
Webの掲示板という限られた場で、何が何でも親に言わなければならないと言い続けることには何の力もないと思います。掲示板では基本的には互いに匿名であり、お互いに何の責任も取れないし、取らなくてすむ距離にあるのですから、その距離でできることは、正しい、現実に即した情報とアドバイスの提供が精一杯だと考えます。
何が何でも親に言わなければいけないと言い続けても、それができない人にできるようになるとは思えません。そう掲示板に書き続ければ、未成年者が事実を書けなくなってしまうだけのことです。
一方、このページでは、できるだけ親に言った方がいいとアドバイスするようにしています。単純に言いづらかったり、言うことがこわい場合でも、実際には親に言うことで必要な援助(金銭、いたわり、理解)を得られることのほうがむしろ多いのではないかと考えるからです。
逆に、年齢を偽ったり、親に言わないでいることは、それが必要だからであっても、未成年の中絶を社会から隠蔽してしまうことにつながるという問題もあります。当事者は年齢を偽ることで、医師はそれを見過ごすことで、親はそれを知らずにいることで、この問題の隠蔽に荷担してしまう。その意味でも、できるだけ明らかにしていった方がいいのではないかと思うからです。
|
|