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ふり返ってみると、このページをはじめたのが1998年のなかごろなので、もうけっこう時間がたっているわけです。 その間に、同じテーマを共有するいくつものページができたり、掲示板の書き込みを通してたくさんのことを学んだり、いろいろなことがありました。 はじめたとき、私たちはこう書いています。
実際に妊娠中絶しなければいけなくなった時どうするか、ということについては意外とアドバイスもなければコメントもないという気がします。ここでは自分たちの体験について、男の側と女の側からそれぞれ語り、そこから少しでも教訓を得られるようにと思い、ページを作ることにしました。 個人的な感想も多いので、決してすべての人に共通するケースだとは思いませんが、いろいろな人に見てもらえばいいと思っています。（男） 1998年にこのページを始めたときに考えていたのは、とりあえず自分たちが経験したことを情報として誰かに役に立ててほしい、ということだけでした。また、妊娠中絶ということについて話し合われるきっかけになればいいなど、その程度のつもりで始めたWebページでした。 当時妊娠中絶の体験を扱ったページはほとんど見あたりませんでした。しかし同じような時期に同じようなアイデアでいくつかのページが始まっていたのだろうなと思います。 始めた当初、考えの中にあったのは、中絶しなければならないときにそれを少しでも「ましな」ものにするにはどうしたらいいか、ということでした。病院をどうやって探せばいいかとか、どうすればよいお医者さん（あるいは自分に合ったお医者さん）を見つけられるか、そして男性が女性に協力するためにはどういうことが必要か、などです。それはみんな、自分たちが体験の中から見つけたことでした。 そのようなことを他の人たちがそれぞれ自分で再発見しなければならないよりも、ヒントとして役に立ててもらいたいというのが、ページを作った理由でした。そして、それは他の多くのページとも共通している部分だと思います。 掲示板をつけたのはもう少し後になってからのことでした。しばらくは安定せず、あまり役に立たない掲示板でしたが、99年にリニューアルすると、思っていたよりもたくさんの書き込みが集まるようになりました。 すぐに掲示板は情報交換と相互理解の場として機能し始めました。たくさんの人たちが疑問や不安に思っていること、それから中絶にまつわる気持ちなどを書かれるようになり、それに対する答えやアドバイス、励ましもたくさん書き込まれました。また、掲示板に「レジデント」のようにいつもいて、アドバイスや情報を書いていただける方も少なくなく、そのような方々の助けによって、「かなしいこと」掲示板は、単に私たちのページの掲示板という以上の価値を持つようになったのだと感じています。 同時に、掲示板に多くの方々が集まって、助け合いという形で機能することになったことは、もはや掲示板がページの制作者だけのものではなく、ひとつのコミュニティになったとも言えると思います。そのことは、私たちがすべての質問や書き込みにレスポンスをしなくても、誰かが代わりに答えてくれるというように、負担の軽減としても表れましたが、逆に、コミュニティの価値を損ねたり、ミスリードしないように維持するという責任が生まれたとも言えると思います。 掲示板が始まった時点で、事実上「かなしいこと」のメンテナンスは「男のほう」ひとりが行っている状態でした。男性である自分が、女性が主体となっている掲示板を管理するというために、自分でいくつか決めていたことがあります。 ひとつは、絶対にリーダーにならないこと。これは、女性が女性の問題について扱っている場において、男性がひとりだけいてリーダーシップを握るということが非常に奇怪なことであるように思われたからです。また、掲示板の価値のほとんどが参加者の書き込みから生まれているのに、管理者がそれを自分で作り出したように振る舞うこともおかしなことだと思ったからです。あるいは、男性が本当はよく知らないようなことを、したり顔で女性にアドバイスして回ることには嫌悪を覚えたからかもしれません。 それから、自分の意見を強く主張しすぎないこと。これは、いろいろな意見がある中で、管理者が自分の意見を強く主張すれば、必要以上の重みになってしまうし、なにより管理者が自分の意見を通そうとする態度でいては、コミュニティがよい状態で維持できないと思ったからでもあります。実際には、自分にも少なからず意見があり、これをきちんと守って来れたかどうかには自信がありませんが、今でも掲示板においてはそのようでなくてはならないと自分に言い聞かせています。 そして、管理者は掲示板がよい状態を維持することを最大の目的として活動しなければならないとも考えました。自分が言いたいことを十分に言えなくても、掲示板がうまく回ればそれでよいということです。そのためには、どんな時にもきちんとした言葉づかいや低姿勢でいなくてはならないし、またいつも冷静でいなくてはならないと考えてきました。 結果的に言えば、ページの現状を維持することを最大の目的にし、自分の意見を控えたのですから、あまり積極的な姿勢であったとは言えませんが、掲示板の価値を保ち、ミスリードしないためにはそれでよかったのだと考えています。 掲示板からは非常に多くのことを学びました。元々知っていたような顔をしていますが、実際には自分が今知っていることは、掲示板の書き込みから知らされたことばかりです。また、書き込みすべてに曲がりなりにも目を通し、繰り返し繰り返し語られることを通して、ようやくわかったことも少なくありません。 一方、ページ開始時に書いた体験記は、長い間そのままにしてあったのですが、どうもその内容に対する（掲示板の書き込みに対してではなく）意見ではないかと思われる書き込みを掲示板で目にするようになりました。実際には、当時と現在とでは考えも異なるし、その間に学んだことも多くあります。当時感じていたことを後から塗り替えるのではなく、できるだけそれに対して正直でいたいと思っていたという理由もあるのですが、説明不足だったかもしれません。 また、掲示板をずっと見ているうちに浮かび上がってきた問題点やそれに対する自分の意見を、そろそろ明確にしなくてはならないのではないかとも思うようになりました。それも、今回のリニューアルにつながったひとつの動機です。 |